「AIで動画編集」は実際どこまで来たか——対話型AIには難しいこと、専用ツールにできること

「AIで動画編集」と聞いて思い浮かべる対話型AI(ChatGPT等)は、実は動画そのものを編集できません。実際に工程を肩代わりするのは、AIを積んだ動画編集特化ツールのほう。専用ツールが得意なこと(文字起こし・字幕の下地・素材の場所探しと生成・メタ文案)と、まだ人が要ること(固有名詞や数字の確認、構成や表現の最終判断)を、煽らず線引きします。

「AIで動画編集」は実際どこまで来たか——対話型AIには難しいこと、専用ツールにできること

「AIで動画編集」という言葉には、いつも二つの極端な反応がついてまわります。ひとつは「もう動画を放り込めば全部いい感じに完成するんでしょ」という期待。もうひとつは「どうせまだ使い物にならないんでしょ」という冷めた見方です。

どちらも、実際とはズレています。そしてもうひとつ、最初に整理しておきたいことがあります。「AIで動画編集」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、ChatGPTのような対話型AIかもしれません。対話型AIは強力で、いまは動画を生成したり作り替えたりできるもの(たとえば Sora のように、動画を素材にして再構成する機能)も増えています。ただ、「動画を作れるAI」と、「字幕・素材・書き出しといった日常の編集工程を一貫して回すツール」は、同じではありません。チャットに指示を打つだけで、喋りに字幕のタイミングを合わせ、素材を並べ、書き出すところまでを一本で完結させる——というのは、まだ現実的ではない、というのが実際のところです。

実際にそこを一つの流れで肩代わりするのは、動画編集に特化してAIを組み込んだ専用ツールのほうです。だからこの記事では、AIを一括りにせず、ショート動画を作る立場から、対話型AIのチャットだけでは回しにくいことと、AIを積んだ動画編集特化ツール(DogaRunもそのひとつです)だからできることを、工程ごとに線引きしてみます。過度な期待も、過度な諦めも、どっちも損だからです。

そもそも「動画編集」は一つの作業じゃない

まず前提を揃えておきたいのですが、「動画編集」とひとまとめに呼んでいる中身は、実はバラバラの作業の集合です。撮った素材を選ぶ、要らないところをカットする、喋りに合う画像や映像を差し込む、字幕テロップを打つ、それを喋りに合わせる、BGMや効果音を足す、色を整える、概要欄やタイトルを書く——。ぜんぶ性質の違う作業です。

「AIで動画編集はどこまでできるか」という問いが噛み合わないのは、この中身を分けずに議論するからだと思っています。ある工程はAIがかなり肩代わりできるし、別の工程はまだほとんど人の仕事です。しかも「どのAIか」でも話が変わる。だから「できる/できない」ではなく、どのAIが、どの工程を、どこまでという見方をするのが実際に役立ちます。

生成AIで動画は扱えても、編集工程を一貫して回すのは別の話

対話型AIはとても強力です。文字起こしのテキストを貼れば、要約や概要欄の文案を返してくれるし、「この構成どう思う?」という相談にも乗ってくれる。企画やコピーの壁打ち相手としては、かなり頼りになります。最近は動画そのものを生成・変換できるものも出てきて、「動画を作る」側はどんどん広がっています。

ただ、ショート1本を仕上げるまでの日常の編集工程——

  • 動画・音声から、何秒から何秒で何を喋ったかという時刻つきの文字起こしを取る
  • その時刻に沿って字幕を並べ、映像に焼き込む
  • 喋っている区間に、合った素材を当てる

——を、チャット画面だけで一貫して回しきるのは、まだ難しいのが実情です。動画編集は「一度きりの生成」ではなく「時間軸に沿って直し続けるファイル操作」だから、と整理すると分かりやすい。生成AIは相談役や素材づくりに使いつつ、この編集工程を一本で回すところは別の道具に任せる。ここを混ぜると「AIで動画編集」の話が噛み合わなくなります。

以下は、その「編集工程を一本で回す」ところを肩代わりする、AI搭載の動画編集特化ツールにできることです。

専用ツールにできること(1):文字起こしと字幕の下地

いちばんはっきり実用になっているのが、喋った内容を文字にする作業です。音声認識は、日本語のナレーションくらいなら、全文を起こして、しかも各セグメントに時刻(何秒から何秒か)を付けるところまで自動でやれます。

DogaRunの文字起こしパネルの実画面。実際に喋った内容が「[0:00.0] クラウドのアーティファクトが」「[0:01.4] Googleでインデックスされて検索に」のように、秒数つきで一行ずつ並んでいる

これが効くのは、字幕テロップづくりの一番だるい部分がここだからです。手で文字起こしをすると、1分の動画に十分以上溶けることがある。聞き取れずに巻き戻す往復が積み重なるからです。AIに下地を作らせると、この「巻き戻して聞き直す」がまるごと要らなくなる。ゼロから起こすのと、出てきた下地を直すのとでは、同じ作業に見えて重さがまるで違います。

ここで大事なのは、時刻をAIに推測させないことです。対話型AIに「この動画の字幕を秒つきで」と頼んでも、尺を超えた出鱈目な時刻が返ることがあります。専用ツールでは、音声認識で取得した時刻情報を基準にするため、対話型AIに秒数を推測させるよりも、実際の音声に沿った字幕配置を作りやすくなります。とはいえ、得意なのは「下地を作る」ところまでで、その下地がそのまま完成品になるわけではない——これは後の節につながります。

専用ツールにできること(2):素材の「場所探し」と生成

解説系や語り系のショートは、字幕だけでは間が持たず、喋りに合わせてイメージ画像や映像を差し込みます。この素材まわりも、下地から進められます。

素材探しで一番時間が溶けるのは、実は「いい画像が見つからない」ことより、どの区間で何を喋っているかを探すことです。喋りに絵を当てるには、まず「ここで“文字起こし”の話をしているな」と場所を特定しないといけない。専用ツールは、実測時刻つきの文字起こしをもとにシーンの骨組みを作り、素材の枠を区間で割ってくれます。「0:12から0:18はこの話」と最初から割れていれば、その探し直しが減ります。

素材そのものも、ツールの中で生成できます。画像は画像生成モデルで、映像は動画生成モデルで作れて、生成したものは素材ライブラリに入れて再利用できる。もちろん自分で撮った素材や手持ちの画像を持ち込んでもかまいません。

ここは線を引いておきます。画像生成は日常的に使える形になってきましたが、映像生成はコストが高く、まだ実データでの検証を詰めている段階です。「全部AIが素材を作ってくれる」とまでは言えません。映像は「使える場面で使う」くらいの温度感で見てもらうのが正確です。

専用ツールにできること(3):字幕の焼き込みと書き出し

チャット画面だけでは通しにくいのが、この工程です。整えた字幕を、スタイル(フォント・色・縁取り)ごと映像に焼き込んで、縦型のmp4として書き出す。ここは「タイムラインに沿ったファイルの操作」なので、テキストをやり取りするだけでは通しづらい部分です。

プレビューで見た通りに焼き込まれるところまでを、専用ツールは一つの流れでやります。一点だけ線引きをはっきりさせると、やるのは縦mp4を書き出すところまでで、YouTubeへ自動で投稿する機能まではありません。書き出したファイルは、いつも通り自分でアップロードする流れになります。

専用ツールにできること(4):メタ文案・要約のたたき台

文字起こしができていると、その先でもAIが効きます。概要欄の説明文、タイトル案、ハッシュタグ、固定コメント、内容の要約——このあたりは、喋った内容というテキストが手元にあれば、たたき台を出せる領域です。

この工程は、実は対話型AIでもできます(文字起こしを貼って「概要欄の案を」と頼めばいい)。専用ツールの利点は、文字起こしから地続きで、貼り付けの手間なく出せることくらいです。どちらで作るにせよ、ポイントは期待値を「完成品」ではなく「たたき台」に置くこと。出てきた文案が3割そのまま使えて、7割は自分の言葉に直す、くらいでも十分に元が取れます。そのまま貼って完成、という使い方をすると、固有名詞や数字の取り違えでつまずきます。

まだ人が要ること(1):固有名詞と数字の確認

ここからは、専用ツールでも人が要る部分です。AIの文字起こしを何本も通していると、外しやすい場所には偏りがあることが見えてきます。とくに崩れやすいのが、固有名詞と数字です。

固有名詞は前後の文脈から補正されにくいので、チャンネル名や商品名が微妙に違う表記で出てくることがあります。数字はもっと厄介で、「1300円」が別の数字に化けると、そのまま誤情報になってしまう。喋りの流れとしては自然に読めてしまうぶん、見落としやすい。

だからここは、AIに任せきりにできない部分です。逆に言えば、どこが崩れやすいかははっきりしているので、とくに固有名詞と数字を優先して確認するといい。もちろん、音声認識は普通の文章でも聞き間違えることがあるので「ここだけ見ればいい」とまでは言えませんが、優先して見る場所が決まっているだけで、確認はだいぶ楽になります。AIが下地を作り、人が急所を直す。この分担が、いまいちばん現実的な形だと感じています。

まだ人が要ること(2):構成と表現の最終判断

もう一段、AIが踏み込みにくい領域があります。「この動画をどういう順番で見せるか」「どこを削ってどこを残すか」「このテロップをどんな言い回しにするか」といった、判断そのものです。

たとえばショートの構成。冒頭の数秒で離脱されないためにどのカットを最初に置くか、というのは、視聴者や自分のチャンネルの色を踏まえた判断で、正解が一つに決まりません。テロップの言い回しも同じで、少し砕けた言い方にするか、真面目に見せるかで印象が変わる。ここはAIに候補を出させることはできても、最後にどれを選ぶかは人の仕事として残ります。

念のため補足すると、これは「AIには一生できない」という話ではありません。今この時点では、こうした判断まで安心して任せられる段階には来ていない、という現実的な線引きです。ここを人がやる前提で組んだほうが、結果として制作は速くなります。

「文字にする」ができると、後工程がまとめて楽になる

ここまでを並べると、ひとつの筋が見えてきます。今のAIが得意なことの多くは、動画を「文字」にしたあとに集まっている、ということです。

文字起こし、字幕の下地、素材の場所探し、メタ文案、要約——これらは全部、喋った内容がテキストになっていることが前提です。逆に言えば、この最初の「文字にする」を正確にやっておくと、後ろの工程がまとめて楽になる。だから自分は、文字起こしを字幕のためだけのものではなく、制作の「起点データ」だと考えるようになりました。動画そのものは検索できませんが、文字になっていれば検索も引用も作り替えもできる。専用ツールがAIを効かせられるのも、まさにこの「文字になっている」状態を土台にしているからです。

じゃあ、どう付き合うのがいいか

結論として、「AIで動画編集」との付き合い方は、こう整理できると思っています。

  • 企画・コピーの相談、文案のたたき台は、対話型AIに壁打ちしてもらう。
  • 文字起こし・字幕の下地・素材の場所探しや生成・焼き込みは、AIを積んだ動画編集特化ツールに任せる。この編集工程を一本で回すのは、チャットだけでは難しいからです。
  • 固有名詞・数字の確認と、構成・表現の最終判断は、人がやる前提で組む。ツールには下地と候補出しまで頼む。

つまり「全部おまかせ」でも「AIは使えない」でもなく、下地はAI、確認と判断は人という分担に落ち着きます。しかも「どのAIか」を分けて考えると、対話型AIと専用ツールで役割が違うことも見えてきます。

一本のショートで見ると、どうつながるか

ここまで工程を分けて見てきましたが、実際の制作では、これらはバラバラではなく一本につながります。並べると、こんな流れです。

  1. 撮った動画か、ナレーション音声だけを入れる。
  2. 実測時刻つきの文字起こしが下地として出てくる。固有名詞や数字を中心に直す。
  3. 区間ごとにシーンが割れているので、その話に合う素材を当てる。足りなければ画像を生成して足す。
  4. スタイルを付けた字幕を、映像に焼き込む。
  5. 同じ文字起こしから、概要欄・タイトル・タグの案を出して、自分の言葉に直す。

制作フロー図。動画・音声を入れると文字起こしの下地(実測時刻)が出て、素材を当てる・生成、字幕を焼き込む、概要欄・タイトル案へとつながる。各工程で人が直す・選ぶ点を添え、下地はAI・確認と判断は人であることを示している

この流れで効いているのは、白紙から始める工程がひとつもないことです。文字起こしという一つの下地から、字幕・素材・投稿文が枝分かれしていく。だから各工程が「ゼロから作る」ではなく「出てきたものを直す」になる。チャットだけではこの流れを一本につなぐのは難しいですが、編集工程を回せる専用ツールなら、ひと続きにできます。

字幕や素材について言えば、この「下地はAI・確認と判断は人」という形をそのまま道具にしたものが DogaRun です。音声から実測した時刻つきで全文を起こし、区間ごとに素材を当てられるようにして、最後は縦mp4に焼き込むところまでを一つの画面でつなげています。実際の手順は解説・語り系ショートをDogaRunで編集する流れに書きました。

とはいえ、読んで納得するより触るほうが早い工程です。まずは手元の動画か音声を入れて、「文字起こしの下地が出てくる」ところだけ試してみると、「下地はAI・直すのは人」という距離感が一番早く体感できると思います。もちろん、人が固有名詞や数字を直す前提や、映像生成がまだ検証段階という線引きは、触ってみて自分の用途で判断してください。

まとめ

「AIで動画編集はどこまでできるか」は、どのAIが、どの工程をで見ると答えが出ます。対話型AIは相談役や文案のたたき台に強く、いまは動画を生成できるものも増えている。ただ、字幕・素材・書き出しまでの編集工程を一本で回すのは、まだチャットだけでは難しい。実際にそこを肩代わりするのは、AIを積んだ動画編集特化ツールで、文字起こし・字幕の下地・素材の場所探しや生成・焼き込みまで進められます。一方で、固有名詞や数字の確認、構成や表現の最終判断は、まだ人の仕事として残っています。

大事なのは、これらを混ぜて「使える/使えない」で語らないことです。全自動を期待すると裏切られ、諦めると楽になれる工程を取りこぼす。下地はAI、確認と判断は人——この距離感で付き合うのが、いまのところ、いちばん損をしない使い方だと思っています。

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